ヤブキタの百年
5月1日の八十八夜を前にして、茶摘の最盛期を迎えようとしている。
静岡県のお茶は、ほとんどがヤブキタだ。
同じ品種だから、今年のような気候だと一斉に収穫期を迎えてしまう。
作業が集中して、夜も眠ること無く働く事になる。
何故、ヤブキタだけになってしまったのか。
ヤブキタは、1908年杉山彦三郎翁が、藪の北側の茶園で見出した。
成長が旺盛で欠点が無い。
時あたかも高度経済成長期であり、肥料の量とともに増収するヤブキタは秀才であった。
消費生活の向上と共に、作れば売れる時代が続いた。
だから茶商は、「ヤブキタでなくてはお茶にあらず」・・・そんな商いを続けてきた。
結果として、静岡のお茶は、ヤブキタだけになってしまった。
100年もの間、一つの品種が凌駕するなどは、植物の世界では有り得ない事なのにである。
それほどに、ヤブキタは優れた品種であったのだが、
個性が強調される今日にあっては、いささか偏重・硬直化の感はぬぐえない。
静岡県立美術館の近くに、ヤブキタの源樹が残っている。
この一本の木から、挿し木技術によって、ヤブキタが全国を席巻したのだ。
はてさて、今年のお茶はどうなるだろうか。
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