影富士
しかも、富士山の影である。
ご来光を待った後、100mほど登って南側の稜線に出ると、
体調が優れなかったこともあって、しばらくこれを眺めていた。
何となく頼りなげなその影は、私達の過ぎ去った時間と同じように、
富士山にも、過ぎ去ったつい最近の過去がある。
200年ほど前の富士は、
噴火口に熱い焼砂が残り、神池(加工湖)も霊験として存在していた。
富士山は、つい最近まで紛れも無い火の山だったのだ。
だから、それぞれの登山口に火に関る祭りが残っている。
富士宮口の御神火祭りや御殿場口のワラジ祭り、そして吉田の火祭りだ。
御神火祭りは、浅間神社の湧玉池でミソギをして、
富士山頂に御神火をいただきに登山する。
山頂の奥宮で点火したその火を、二台のミコシに戴いて市中を練りまわす祭りだ。
富士山の火は、まさに神の火なのだ。
ミコシの一台は、富士山の形をしていて御影と呼ばれているそうだ。
祭りのその日、かつて噴煙を上げていた山頂には、登山者の長蛇の列が出来ていた。
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