空の家
昨夜は浜松市北区渋川の「空の家」に泊めていただいた。
空の家は、西尾精密の西尾真之会長の作った別荘兼塾だ。
西尾さんは山奥の廃屋を買い求めて、仲間と語らいつつ過ごす民家を作った。
集落を見下ろす高台に建つその茅葺の建物は、実に落ち着いたたたずまいである。
建物の周りには山菜園や山葵田なども作ってあって、
西尾さんを訪ねてここに多くの人々がやってくる。
我々も西尾さんを囲んで「物づくり」についてお話を伺おうということだった。
西尾さんが冷温鍛造という技術で多くの特許を得ているし、
不良品率ゼロの製造業を育ててきたからだ。
しかし西尾さんは、1時間余の講話の中で具体的なことは何一つ語らなかった。
その代わりに、言うならば自分の素朴な人生観を語った。
生い立ちから企業人としての姿勢、社員とともに歩んだこれまで。
そして自分の人生は素晴らしく幸せだと結んだ。
更にこれからは「おかしくなったこの国と利己的な風潮を糺すことだ」とも言われた。
終始笑顔でとつとつと言葉少なに語ったのだ。
だから私達は、そのわずかな言葉から多くを想像し考えることが出来た。
私はやはり自分の自画像のこと、そして地に足の付かないこの国のことを思っていた。
人はやはり面白い。
事業に成功して贅沢の限りを尽くす人もいるが、西尾さんのような人もいる。
彼の最大の贅沢は、様々な人々が次々と彼のもとに集まってくることだ。
ワイワイと語らう私達を彼は実に楽しげに眺めている。
どうも、それが彼の人生の果実でもあるかのように。
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