人生の今
山の中を一人走っていると、そのことを感じている。
遠い宇宙のかなたから、この地球の上の蟻んこの様な私が見える。
未来でも過去でもなくて、今ここにいる私が見える。
思えばずう~っと、明日のことを考えて前のめりに走ってきた。
「後何日」と言う声に期待や恐れを抱きながら、ひたすら駆けてきた。
子供を育てるとか家を守るとか、仕事の責任とか、そんな義務感に追われ続けた。
今、そんな諸々がスッと掻き消えて、まったく自由な私がここにいる。
やはり同じように前のめりに走ってはいるのだけど、
今は未来や過去の為に走っていないのだ。
山の緑道はウバメガシのトンネルになっている。
ウバメガシの成長はとてもゆっくりで、だからこそ備長炭の原料になる。
杉やヒノキの様に見栄えは良くないのだけれど、
私はこのウバメガシにこよなく愛着を寄せている。
それは乾燥した尾根で必死に生きているからだ。
大木にはなれないけれど、身の内に確かな蓄積をしている樹だからだ。
彼らも今を必死に生きている。
そして私は、今を生きている。
落ち葉の上に真っ白なキノコが傘を広げている。
微塵の隙もない端正な姿をしている。
そしてその端正な姿は、今のこの瞬間しか保てないのだ。
そう、人生の今を楽しもうではないか。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント