秋のキザハシ
何処で鳴くのか四囲から虫の声が聞こえている。
酷暑がにわかに休止して、一気に秋を感じさせている。
小笠山ではヒグラシの切ない声が響き渡っている。
ツクツクボウシが秋のシグナルなら、ヒグラシは夏の哀歌だ。
そのカナカナの声が降り注ぐ中を走りながら、夏を懐かしんでいる。
夏は紫外線も強いが生産力も旺盛で、木々や作物を力強く育てる。
人の一生における夏も疲れを感ずることなく過ぎていく。
最もエネルギーにあふれ気力のみなぎるのが夏だろう。
やがてその暑さが衰えると、たわわな稔りの秋が訪れる。
柿や栗、ブドウはもちろんのこと、成熟という成果を味わうことが出来る。
秋には日々思うことも違ってくるし、その様はヒグラシの声に似てくる。
山は静かで、そしてヒグラシの声で満ち満ちている。
私の人生も季節で言えば今頃かなと思う。
多くの人々と会い、激しく仕事をし、様々なドラマの演者の一人でもあった。
今はその激流から離れてよどみの流れに身を任せている。
山の落ち葉は、折り重なって走路の絨毯になっている。
その山道を静かに走りながら考えている。
やがて来る稔りの秋には、真っ先に何を収穫しようかと。
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