城とたたずまい
かつて、掛川城が再建された頃のことである。
通勤の車中で、城を巡って激しく言い争う二人に遭遇したことがある。
幾分お酒が入っていて、一人は「榛村のヤツ、あんなもの造くりゃがって・・」と息巻いている。
対するもう一人は「テメー、その御託は何だ!。表へ出ろ・・。」ってな剣幕だった。
多分それは当時の市民を二分する意見の相違だったと思うが、あれから20年余が経過し、
掛川城(木造)も新幹線掛川駅も、そこに存在することが至極当然なインフラになっている。
何でも反対する勢力はいつも存在するが、指導者というものの先見力と実行力こそが、この地域を変える大きな力だったと改めて思う。
ところでこの掛川城の一角は、多分にゆかしい文教地区として一見の価値がある。
掛川城(本丸)と太鼓櫓、城の傍らには歴史的建造物の城郭御殿があり、
隣接地には「経済と道徳」の調和を説いた二宮尊徳の大日本報徳本社や報徳図書館、
そして二の丸美術館や茶室、竹之丸御殿、周りに葉城下町風の町並みが広がる。
それらが全体として調和した風景になっていて、ゆっくりと散策する気になれば、
ほぼ半日は要するのだが、案外地元では灯台下暗しで顧みられることが無いようだ。
先日の駅伝のスタート前の一時、この一角を散策しながら、「やはり城が無かったら駄目だな」と思った。
城は正に、この地区一帯の要として無くてはならない建物だ。
機会を改めて、ゆっくりこれらの一つ一つを見て回っても良かろうって気になった。
殊に報徳本社で明治期の建物がそのまま残っていて、二宮尊徳の教えを噛みしめるのも良いだろう。
尊徳の「道徳のない経済は犯罪であり、経済のない道徳は寝言である」はしかりであり、
昨今の産業事件(燃費偽装など)を思うにつけ、古いと言わずに温故知新で紐解いてみるべきではないかと思う。
ともあれ、掛川城の一角は、物思わせる佇まいを醸し出している。
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