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2019年1月 8日 (火)

心ゆくもの

言葉は歴史と共に創られてきた訳だが、「心ゆき」などの言葉は何とも清しく感じる。
今でも「心意気や良し」などと使われて、弛まぬ前向きな心を称揚する言葉だろう。

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清少納言の枕草子に「心ゆくもの」の段があって、牛車が気持ちよく走る様や川舟下りの勇ましさなどを例に上げている。
少しばかり難しいことを、それなりに上手くやり熟す様ってことだろうか。

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近世の私達は効率や便利を合い言葉に、只管「楽」を追求してきたのだが、つまりは「心ゆくもの」を減らし続けてきたのである。
確かに移動にしても、意思伝達や表現にしても、私達はほんの五十年前と比べても異次元の世界にいる。

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例えは恋人と連絡を取るのだって、一昔前は電話するのさえ大変だっただろうし、「君の名は」なんて物語は今では有り得ない話だ。
幾多の困難を乗り越えての逢瀬は、それは感激に勝る歓びだったのに違いない。

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つまり私達の日常だって、楽でそれ程の苦労の無いことは、実は余り面白くないのである。
それに表現者(芸術)の世界も様変わりしていて、趣味の絵画なら兎も角、昔のような風景画や人物画では写真などの映像に敵うはずが無い。

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文学だって、電子メディアが当たり前になって、本はさっぱり売れない時代だ。
俄然、プロのアーティストが生き残るには、科学に勝る新奇を創造する他ないのである。

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静岡市美術館で開催されている「起点としての80年代」を覗いて、そんなことを考えていた。
確かにこの21世紀は、明確な(分かり易い)目標を見いだし難い時代だ。

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ともすれば、(メタボが激増しているように)楽な方へ楽な方へと流されて行ってしまう。

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しかし、敢えて困難にも果敢に挑戦する心意気こそ、人生の面白さに通じると思う。
私も古い人間の部類だろうが、冷たい空気の中を颯爽と走る姿を「心ゆくもの」と思う。

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繰り返すが、楽で間違いなくやれることに、あんまり面白いことはないのである。

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