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2019年3月 4日 (月)

第九節 チェックイン

第九節 チェックイン

翌朝8時、選手達が講堂に集まって、大会を前にしたブリーフィングが始まった。説明の多くがメディカルスタッフの紹介、そして生命維持のための注意事項だ。水は常に2リットルを背負うこと、過去に二名の死者を出しているのは、コースを見失って水が無くなったからだ。毎朝、靴を履く際には中にサソリが入っていないかを、必ず確認することなどと続いた。

ひとしきりの説明が終わって、最年少参加者の紹介があった。韓国の兵役を終えたばかりだというDond君22歳であった。続いて、「今回の最年長挑戦者は70歳・・・」と一呼吸置いて男の名前が告げられ、男が立ち上がると一斉に拍手が沸き起こった。すると次の瞬間、フッと目の前にスマートフォンか差し出され、見るとそこには日本文字で「尊敬」と表示されていた。隣に座っていた韓国の男であった。

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参加者の多くが30から40歳代だから、流石にここでは70歳は価値ある年齢なのである。そもそも人は、長寿そのものに価値があるのではなく、何をするかにこそ価値を見いだし得るものではないか。ブリーフィングが終わると、最年少のDong君が親しげに握手を求めてきた。母親が日本語教師をしているらしいが、流石に儒教の国の男である。

メディカルチェック、装備品チェック、カロリーチェックが済むと、レースのパスポートとゼッケンが渡された。午後にはその重さ13kのバックパックを背負ってバスに乗り、砂漠の道をスタート地点まで200k近く北上するのである。

やがて荒涼とした砂漠の一角にテント村が現れ、そのうちの一つのテントに7人が割り振られた。スイスのロバート、イタリアの本屋マルコ、ホテルのプールでビキニ姿だったカナダ人二人、それに高田と澄江だった。

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テントは、猛烈な風と砂塵が吹き付けてバタバタと揺れ動き、中には厚く砂が積もっていた。それは野戦陣地もかくやと思わせる光景で、もはや笑って観念する他無いと覚悟を決めた。それでも夕方が近づくに従って風が収まり、テントの外に置かれた丸太を打ち付けただけのテーブルで、防災用食に湯を注いで腹を満たした。ナビブの黒人達が、ドラム缶で火を焚き湯を沸かしてくれるのであった。

いよいよ、レースが始まろうとしていた。

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