昔は沢山の生産者が、野菜などを少しずつ作って農協に出荷し、
農協は、それを一定の規格でまとめて卸売市場に送った。
卸売市場では、中卸がその青果物を全国の八百屋に分荷していた。
この機能は、随分上手く機能していた。
しかし、八百屋や果物屋がなくなって、物流は量販店の独壇場となった。
それに外食や中食産業が発展し、そこで実際の需要が発生するようになった。
川下はどんどん変わっていくのだけれど、川上がさっぱり変わらない。
つまり、青果物の流通が動脈硬化を起しつつあるのが今日の姿だ。
それで食品産業の中には、直接生産に乗り出すところ出始めている。
知久屋や和民などの外食産業、それにキューピーなどもそうだ。
袋井市の南部に進出している「若葉フーズ」という会社もその一つだ。
岐阜県を本拠にするこの会社では、毎日十トン余の新鮮なダイコンを必要としている。
刺身のツマを生産・供給するのが業務だからだ。
その業を拡充していくには、どうしても原料ダイコンを、価格・量ともに安定して確保することが必要になる。
それがこれまでの流通機構では、どうしても無理なのだ。
それで直接生産に乗り出しているのだ。
企業が農業生産をせざるを得ない時代が、到来しているとも言える。
今日の話題は、そうした時代の流れを受け止めて、
「それならその供給を引き受けよう」としている農場のことだ。
(有)佐野ファームである。
食品産業や量販店の需要に対応して、一定の規模で計画的な生産をし、
これを確実に納品するシステムを目指している。
現在は、レタスや水菜、フリルレタス、スイートコーンなどを6ha余りで生産している。
家族経営が当たり前だった農業生産を、誰でも就業できる職場に変えようとしている。
社員やパートさんを引っ張っているのは、社長と専務である。
今日は、レタスのビニール被覆作業であった。
そして、そのトンネルの支柱設置は、機械の力をフル活用していた。
この地域では、恐らく始めて導入された機械だろう。
多くの面積を被覆するには、恐らく数万本の支柱を刺さなくてはならない。
それにはどうしても、機械力が必要なのだ。
こうした先取の取り組みが、農業という産業を変えていく。
若い社員の皆さんも、生き生きと生産に取り組んでおられた。
自分達が、新しい業態を作っていくんだという、そんな自負心を恐らく持っているのだろう。
頑張れ、わかものたち!